2025年5月

 最近は当院の患者さんが転倒したり、脳梗塞や肺炎を起こしたりと急に具合が悪くなることが少し増えている印象があります。それまで普段通りに過ごされていると思っていたら突然救急受診が必要になったりする訳です。透析でも外来でも共通の現象で、背後には高齢化という事情があるのかもしれません。
 当院は外来専門のクリニックで、糖尿病や腎臓病、肝臓病など慢性疾患の患者さんがほとんどです。そのためか、ご高齢でも比較的お元気に通院されている方をよくお見かけします。更にその先を持病と付き合いながら元気に過ごして頂くにはどうしたらいいかな、とよく考えます。その中でポリファーマシーという言葉が、今ちょっと気になっています。つまり、薬を沢山飲みすぎるのは要注意ということです。
 医師である私はほぼ毎日、「お薬お願いします。」と言われているような気がします。もちろん薬剤の処方が医師の主要な役割であるのは間違いありません。一方で患者さんが服用されている薬の数を減らす努力も大切であると、WHOや厚生労働省が繰り返し示しています。
 薬の飲みすぎは、思わぬ副作用や体への害を引き起こします。かといって処方された薬を全く飲まずに捨てていては、治るものも治らないかもしれません。6種類くらいまでの薬を、きちんと飲み続けるのが適当とされるようですが、当院の他にも整形外科や循環器内科など色々な科にかかっていれば10種類くらいすぐ突破してしまいます。
 この薬を止めてもいいのだろうかと私が迷うこともあり、薬を中止するには結構時間と手間暇がかかります。それでも過剰な痛み止めや睡眠剤、抗生剤などを減らす努力が、患者さんの健康寿命を伸ばす可能性があります。
 入院の何割かは薬の悪影響によるものである、との研究結果もあるようです。患者さんを診察したうえで薬を減らす、ということも私の仕事として忘れずにいたいと考えています。

もみじ5月号 四方山話より