つい先日のことです。「喘息の患者さんが新型コロナで亡くなる確率は低い。」と聞いて、正直耳を疑いました。私の外来では喘息の患者さんがコロナに罹って軽症とはいえ苦しそうにされていた例もあり、「喘息があってコロナに罹ったら大変だから、気を付けて下さいよ。」と色々な患者さんにお話していたのです。しかし自分でも少し調べてみますと、やはり喘息の方はコロナに罹りにくく重症化率や死亡率も高くないという研究結果が多数あるとのことでした。意外なことですが、ちゃんと裏付けがあったのです。
大学病院などで専門の先生が大勢の患者さんの情報を集めてしっかり解析、考察した結論にはやはり強い説得力があります。私のような一人の町医者が自分の経験や感覚だけで判断し、診療を進めるのは一定の危険が伴うということでしょう。
自分の感覚を過信した最近の失敗としては、腹部エコーをする予定の患者さんに心エコーをしてしまった例も思い出します。「今日は心エコーの日だ」と私が根拠もなく思い込んでいたための失敗でした。間違いを示唆するサインが周囲にちらちらしていても、自分は間違っていないという思い込みが私を失敗に向かわせます。
何事に対しても自分の意見を持つことは大切なのですが、「あれ、何か変だな。」という時に自分の方が間違っていると考えるのは簡単ではないようです。私のように思い込みの激しい人は特に注意がいるのかもしれません。
もちろん、何かおかしいという自分の感覚が正しかったという場合もたまにはあるのでなかなか難しいものです。8月の南海トラフ地震臨時情報では曖昧な表現に悩んだ方も多いと思います。大失敗を防ぐためには、正しいかもしれないし違っているかもしれないという微妙な感覚も大切であるようです。
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