真備町を中心に県内でも大きな被害の出た西日本豪雨から6年が経過しました。真備町の街並みを見ると復興が進んでいるように感じられますが、私達はあの豪雨による被害を忘れてはいません。しかし今現在抱える問題に紛れ、災害のことを意識せずに過ごす日もあります。それはよいことでもあり、また注意すべき点でもあるようです。
災害による激しいストレス、悲しみ、喪失感などはできるだけ早く癒やされるべきです。医療機関でも人は患者と医療従事者と、どちらの側にいても様々な理由で精神的打撃を受けることがあります。私は当院でそんな事態が起きないよう努める立場ですが、それでも院内からストレスを一掃することはできません。医療機関とは様々な病気や辛い事情を抱えた人が集まって来られる場でもあるからです。
私自身、公私にわたって思わぬ事態に直面し、しばらく強いストレスの影響から抜けられないこともあります。ただ私の場合、辛い出来事から立ち直る力もまた当院での仕事によって与えられてきたように思います。目の前にいる患者さんやスタッフとのやりとりから医師である私が励まされ、また一歩踏み出す気力を得ていると言えます。本当に感謝すべきことです。
復興の目標として、なりわいを取り戻すということがよく言われます。生業、なりわいには仕事という言葉とは少し違った味わいがあります。家事、農作業、家族の世話、地域での活動などにも、仕事と同じくらい大切な意味があるとの認識が広がっています。
遊んでいても忙しく働いていても、災害のように理不尽で苦しい出来事は突然に私達を襲ってきます。完全な備えは難しく、被害が発生した直後から、人々が立ち直っていく努力や支援が始まります。日常の仕事やなりわいのような医療を穏やかに続けることは、様々な苦しみや辛さから抜け出す確かな道筋になると信じています。
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