2024年7月

 歴史的な円安と物価高、とどまることのない高齢化と少子化、異常な暑さに大雨などなど、コロナ禍を忘れかけても私達の周囲は困ったことだらけです。年を取る毎に個人的な悩みも増え、一体どうしたら良いのかとため息をつきたくなる方も多いようです。
 私にも多少の悩みはあるような気がするのですが、はて、それはどれだけのものなのでしょう。先日たまたま知人に出会って、私が暗い顔で歩いているのでどうかしたのかと言われました。確かに私は明るい方ではないのですが、最近は心身ともに割と調子が良いと思っていたのでそんなに表情が暗かったとは少々意外でした。
 
街中では笑顔で活気に溢れた若者を大勢見ることができます。観光や食事、買い物に余念のない人達でごった返す光景も、あちこちで戻ってきたと聞いています。くよくよ悩んでばかりいても仕方ないということなのでしょうか。不景気な顔をしてその辺りを歩いている私は、ある意味ちょっと困った人なのかもしれません。
 医療現場で笑顔の価値を説く先生は大勢おられます。それは多分、強要されることもなく、人を思いやる気持ちを持った温かい笑いなのではないでしょうか。透析医療を取り巻く環境も年々厳しさを増していますが、笑顔とはそんな状況に立ち向かう手段の一つであるとも言えます。
 怖い顔や冷たい言動で人を動かす方法もあるようですが、そうした手段でみんなが暮らす環境がよくなるのかは確かに疑問です。苦しい時こそ敢えてゆったりした穏やかさを選ぶ工夫が、人を救うこともあるでしょう。当院が目指す道は、そんなところにある気がします。無理して笑顔を作るかどうかはともかく、出来る限り控えめで穏やかに、日々現れる大小の問題に向き合えればと思います。

もみじ7月号 四方山話より