2024年2月

 元旦に能登半島で大地震がありました。被災者の方々には心よりお見舞い申し上げます。この度も複数の透析施設が大きな被害を受け、多くの方々のご尽力により透析患者さんへの医療が継続されています。災害と透析医療の深い関係について、改めて考えさせられます。災害と隣り合わせに暮らす今、自分に何ができるのか、被災地支援の映像を見ながら繰り返し自問しています。
 少し視点を変えて今までを振り返れば、私達は長いこと競争にさらされながら生活してきた気がします。子供の頃からスポーツには大会があり勉強には受験があり、社会に出ても業績や収入など延々と優劣や上下を競う中で生きてきました。他者と比較され、我慢と努力を重ねて勝利する物語に私達は馴染んでいます。
 健全な競争は活気ある社会に欠かせませんが、お互い手を差し伸べ合い、助け合う文化も大切にする必要を強く感じます。今は穏やかな日常に恵まれた岡山も、いつまた西日本豪雨のような災害に襲われるかは分かりません。支援する側とされる側が入れ替わることもあるでしょう。
 この一ヶ月でも私は数々のつまらないことに腹を立て、周囲に不満を訴えていました。被災地のご苦労を思えば全くお恥ずかしい限りです。「今までこんなに我慢して頑張ってきた。だからこのくらいの権利は当然だ。」それが何十年も競争社会で暮らした私の主張だとすれば、何とも情けないことです。
 殊更な言葉も派手な宣伝もなく、黙々と被災地の支援や復興に取り組む方々に深い敬意を表します。長丁場となる災害支援には、笑顔や楽しみも大切な要素であることが分かってきました。何かを誇示することも我慢しすぎることもなく、腹の立つことも穏やかで持続的な取り組みで対処する。私達は災害に対して全く無力という訳でもありません。ある意味では対等な人と人が手を携え苦難を乗り越える道は、普段から実践できるように思います。

もみじ2月号 四方山話より