2024年11月

 「あなたの尊敬する人は?」と問われることは、大人になると多くはないかもしれません。改めて尊敬というと堅苦しいのですが、暮しの中で「ああ、この人はえらいなあ。」と思うことはよくあるのではないでしょうか。新聞などの記事を読んでそう思うこともありますし、日頃接する中で人の仕事ぶりやたたずまいに感銘を受けることは一つの喜びとも言えます。
 そのように立派な人に出会った時、「それにひきかえ私は・・・」と自分の小ささ、至らなさに恥じ入ってしまうこともよくあります。なぜさっと助けの手を差し伸べられないのか、なぜ言わなくてもいいような余計なことを口にしてしまうのか、などと考え出せばきりがありません。
 人と自分を比べない方がいい、とはよく聞く言葉です。そうは言っても、周囲を見渡しては自分の現状にため息をついたり密かに悦に入ったりといったことを、ついやってしまうのが人情です。人の良いところを見習うような努力が無くなってしまうのも、ちょっとまずい気がします。透析を受けていても、他の患者さんから食事やシャントのことなどを教えてもらって大変助かることがあります。何事にもやはりお手本になる人がいるものだと思います。
 人と人は、どうも気づかぬうちにお互いに影響を与え合っているようです。朱に交われば赤くなるというか、良くも悪くも似たところが出てくるという訳です。そこで立派な人のそばにいるだけで、ほんの少しだけでもその人に近づけるのではないかと都合のいいことを考えたりもします。 
 焦って人の真似をする訳ではなく、かといって変化を起こす努力を放棄する訳でもなく、自分のすぐそばにいる人から何かを少しずつ学び取ることは私にも出来る気がします。まず周囲の人に敬意を払い、その人の長所を見るところから始めたいと思います。

もみじ11月号 四方山話より