2023年7月

 最近「何だかもやもやする。」というご経験をなさったでしょうか。「もやもやする。」とは微妙な違和感を表す言葉として定着しつつあるようです。ご家庭やご近所、友人との付き合いで、もやもやすることも珍しくないと思います。
 医療機関で身体の不調を相談してもすぐに解決はしなかった、というのは残念ながらよくある話です。患者さんはもやもや、医師である私ももやもやするばかりでスッキリ片付かず申し訳なく思っております。特に内科や精神科では問題の重大さが分かりにくいことも多く、私など毎日もやもやの中で生きているようなものかもしれません。
 「何か困った事があったらおっしゃって下さい。」と一言あると少し嬉しい感じがしますが、困り事への対処も実は多くの場合簡単ではありません。それでもやはり声をかけようという姿勢が大切であるようです。もやもやした時や困った時に、一緒になって困ってくれる人がいるのといないのとでは何かが違うからです。
 頭を抱えて悩むという行為は、目立った成果が出ない割に疲労がたまります。人から感謝されるかどうかも分かりません。ただ、疲れるばかりでなくもやもやと悩み苦しんでいることが、意外に自分を生かしてくれているように感じる時があります。成長したとか鍛えられたなんて格好のいいものではありません。もやもやした状況でうじうじと悩み続けながら、同時に自分が何かに支えられているような感覚です。これは何なのでしょう。
 すぐには解決には至らない宙ぶらりんな状態に耐える能力が、最近様々な分野で注目されていると聞いています。何と言いますか、まあ地味な能力です。しかし頼りない医師である私にも、もやもやに耐え続ける力だけは結構あるような気がします。透析医療の現場では様々な困り事が日々起こりますが、明日もまた、もやもやを抱えている方と共にありたいと願っています。

もみじ7月号 四方山話より