2023年6月

 男女の格差、賃金格差というように、格差社会という言葉を日常的に耳にするようになってもうどのくらい経つでしょうか。
 厚生労働省からは、当院のような小さな医療機関にまでパワハラやセクハラに代表される職場の問題に対処するよう通達がなされています。いわゆるハラスメント、社会的な嫌がらせの背後に格差や差別意識があるとは、私も最近になって改めて深く感じたところです。
 では性別による格差や賃金待遇での差別のない本当の平等とは何か。残念ながら誰からも明確な返答は得られません。社会に一定の格差や差別があるのは当然で、その中で自分が上の立場にいればいいのだと考える人も少なくないようです。私のようになりたければあなたも努力しなさい、ということなのでしょうか。
 まるで自分の方が格下であるかのように扱われるのは我慢ならない。そう言わぬばかりの圧力を感じることは誰にでもあるようです。それは人の言動や雰囲気から感じることもあれば、外ならぬ自分自身の中に居座っていることもあります。世の中はもちろん私の周囲でさえ格差なしにはできていないのですが、対人関係のストレスに力を奪われ医療がおろそかになっては本末転倒です。
 差別や格差を当然とする感覚は、怖いことにいつの間にか自分の中に忍び込んできます。差別どころか暴力とも受け取れるような言動に対しては、少しだけでも勇気を持つことが大事だと私は感じていますが、何が正しい勇気なのか明確に教えてくれる人はいません。ただ人に努力を要求する前に、自分は謙虚さや思いやりを忘れてはいないか、何度でも繰り返し考えることは私にもできそうです。格差社会の息苦しさに押しつぶされず、医師として、医療機関としてできることを考え続けていきます。

もみじ6月号 四方山話より