2023年4月

 4月という時期は何となく新しいことが始まりそうな予感がします。嬉しいこともあるのですが、人手不足や働き方改革の影響を受ける方々も多いのではないでしょうか。
 昭和から平成の始めにかけては、忙しさを競い合うような雰囲気が至る所で感じられました。ところが最近では、がむしゃらに努力するだけでは幸せは掴めない、という考え方がどうも優勢になってきたようです。このところウェルビーイングという言葉が政治でも医療でもよく使われるようになりましたが、これは高齢化や持病など様々な事柄と向き合いながらも安定した生活を営むことを目指しているのだと思います。
 少しでも多くの方のウェルビーイングのために、お金や予算を大量に注ぎ込むことで何とかしようという意見もよく見かけます。ただご承知の通り日本の財政難は深刻です。ばらまきの代償は、一部の人に押しつければすむというレベルではなくなっています。
 「忙しい、大変だ。」と言いながらご自分の都合を押し通している方々が、必ずしも充実した毎日を送っているとは限らないようです。これは私自身も心当たりがあります。実績や数字を目に見える形で示すことは重要なのですが、生きるうえでは目にははっきり見えなくとも大切なことがあるのもまた事実です。
 心静かにたたずむような、忙しい昭和や平成の頃には無意味とみなされがちだった価値にしっかりと目を向けるのはどうでしょうか。ゆっくりしているように見えても着実に毎日を歩んでいる方々に私はよく出会います。多くのものを手にしながら毎日忙しい人に比べ、決して多くを持つ訳でもなく穏やかにしている人が格下という訳ではないはずです。人手不足や働き方改革の中でウェルビーイングを目指すには、まず私自身が色々な形の幸せを理解するべきであるようです。

もみじ4月号 四方山話より