2023年10月

 他の人の言動を見ていて、「うーん、これは注意した方がいいんだろうか・・・」と悩むのは大人特有の現象かもしれません。どなたでも一度や二度の経験はお持ちではないでしょうか。あまり口うるさく言うのもどうかと思うし、さりとて放っておいて良いのかと言われると・・・ というところです。
 ここで思い出すのが、他ならぬ自分の言動も人から「困るなあ」と思われている可能性です。私などはボサッと立っていて、知らぬ間に人の通路を塞いでいることがよくあります。また先日は、私の不注意な運転で他の自動車にご迷惑をおかけしました。処方のミスで患者さんにお詫びすることも珍しくありません。自分の至らなさを挙げていけばきりがない訳です。
 反対に、ちゃんとやっているのに人から注意を受けたりすると、どうにも黙っていられないものです。つい声を上げてこちらの言い分を主張するのですが、相手が納得することは少ないようです。普段から不注意で人に迷惑をかけている私のような者が何か言っても、説得力に乏しいということでしょう。
 気の利いた声かけや、うまい言い方で相手に働きかける人がおられますが、全く羨ましい限りです。そんな人に注意されれば、少々難しい人でも素直に従ってくれるように思えます。ただ、ハードルの高いことを無理にやろうとするより、静かに状況を見守るというのも一つのやり方ではないでしょうか。自分の側に何か落ち度があるのではと見直す気持ちがあれば、人の行動を見守る時間が無駄に流れていくことは少ない気がします。
 人の行動を変える難しさに比べれば、自分の失敗を予想することはまだ何とかなりそうです。駅などに集まる落とし物や忘れ物の多さからは、うっかりさんのご同輩が随分いるのだと分かります。人に向かって声を上げる前に何か見落としはなかったか、もう一度振り返ってみたいと思います。

もみじ10月号 四方山話より