2022年5月
 4月から早くも初夏の陽気となり、換気の必要もあって窓を大きく開け放すことが増えました。冬にはうるさかったエアコン室外機の勢いも収まり、時間帯によっては院内が本当に静かになります。そんな時に部屋のドアまで全開にしてぼんやりしていると、藤の香りが漂い鳥や蛙の鳴き声が聞こえたりします。クリニックの中にいて、ゆったりした心地良さを感じる一時です。
 平和な総社から遠く離れたウクライナでは、ロシアの侵攻がまだ続いています。ロシア兵から拷問を受けた市民の遺体が放置されていたなどと、悲惨なニュースが連日のように届きます。戦争の影響で世界の燃料や食料が不足し、円の価値は更に低下するという困った知らせも聞こえてきます。穏やかな時は長くは続かないのでしょうか。
 これから先どんな災難が待っているのかと気が重くなるようですが、透析に関わる私達の日々はもとより忍耐と隣り合わせです。痛みや体の不調が消えない患者さんの訴えや、色々な思いを抱えている職員の声を聞きながら、何とか我慢してもらっているのが私の日常です。透析と共に生きる日常の悩みに対して、私の力はささやかなものです。こう書くと重苦しい雰囲気ばかりが目立つようですが、本当のところはどうなのか。それは実際に当院に来て頂ければ分かると思います。
 どうも私達は、毎日苦しさに打ちひしがれているばかりではないようです。世界の動向や自分の行く末がどんなに心配でも、やはり希望は残されています。病気や透析を辛く感じていても、人の温かさを感じ笑顔になるような瞬間はまたやって来ます。何も根拠はないではないかと言われそうですが、私はそう考えます。
 5月は新緑の爽やかさや明るい陽射しを感じられる時期です。透析の現場では様々な事が起こりますが、苦しい状況にも必ず変化が訪れることを忘れずにいたいと思っています。
もみじ5月号 四方山話より