2022年3月

 オミクロン株の勢いは止まることなく、私の周囲でも感染した方がぽつぽつと出るようになりました。私自身いつ感染してもおかしくないような状況で、何とかしたいと思いつつ手洗いや換気に精を出す毎日です。
 抗原検査やPCR検査でコロナ陰性と出たときに「あー、よかったー。」と安心する気持ちはよく分かるのですが、医師としては「陰性でも完全に感染が否定された訳ではないので、引き続き十分注意して下さい。」と安心感に水を差すようなことを言わざるを得ません。残念ながら検査結果を100%信頼できるということはまずなく、現実には78%や92%といった中途半端な数字がほとんどです。「いいの?ダメなの?いったいどっちなの。」と苛立つこともあるでしょう。
 新型コロナ感染のみならず、透析中の抜針事故や施設内での転倒・転落など透析施設特有の事故は当院でも発生しています。シャントの閉塞や感染も、かなり減ってはきましたがまだゼロではありません。院長の努力が足りないのではないかと言われれば全くその通りで、「安全・安心」の道のりとは長いものだと実感しております。
 
コロナ禍収束の見込みはまだ遠い中で、 感染対策と社会活動を両立させる道が世界中で模索されています。絶対の正解はない状況で一歩一歩前進を続けるには、白黒はっきりしない灰色の状態に耐える心が役立つようです。安易に楽観せず、焦りや不安に浮き足立つこともなく、状況と静かに向き合う中で希望の芽が見えてくる気がします。
 灰色を少しでも白くする努力、感染症の広がりや医療事故の発生をより低く抑える営みに終わりはありません。しかし100%の「安全・安心」がないからといって、何もかもダメだと決めつける必要もない筈です。明日もまた手洗いや換気を繰り返しながら、明るい兆しを待っていたいと思います。

もみじ3月号 四方山話より