2022年12月

 新型コロナは終息せず今までに無かったような値上げの数々に見舞われるなど、来年に向けて明るい展望が見いだしにくい年の瀬になっているようです。まだ旅行や宴会を楽しむ気になれないという声は、私の周囲でも引き続き聞かれます。
 その一方で今年は様々なイベントが再開され、医学の世界でも腎臓、循環器など専門分野での学会、研究会が再び活発になった印象があります。何もかも自粛や中止という考え方を変えて、感染の危険性やお金のかかり具合を検討して物事を進める方が理にかなっているのでしょう。周囲の状況が厳しくとも、いたずらに暗い気分になって落ち込んでいるだけではつまりません。
 欧米や中国、ロシアなど大国に関する報道からは力ずくで人をねじ伏せるような考え方が毎日のように感じられ、日本近隣でミサイル発射のニュースも随分増えました。国内でもツイッターなどのSNSでは、一方的な個人攻撃が嫌でも目に入ります。話し合いや人の和による解決よりも、排除や暴力が幅を利かせる風潮は更に広がるのでしょうか。
 新型コロナによって自粛や我慢の重なる静かな生活で、私は自分の弱さや無力さの中にもかすかな光を感じる気がしました。人の心や人と人のつながりは目に見えない力を産み出し、人を押し潰すような圧力に向き合えるという希望です。それは、自分の苦労を思い出す以上に人の支えや気遣いに感謝する感覚とつながっています。
 私達が頼る食料やエネルギーの供給には限りがあります。その苦しい現実は、物価高と共に私達に迫って来ます。しかし医療という営みに必要な感謝の心は、いくらでも供給を受けられるかもしれません。人を信じ、感謝や愛の力を信じ続けることが自分にできるか。少しでも明るい年が迎えられるよう、私もまた努力を重ねて参ります。

もみじ12月号 四方山話より