2022年10月

 医療の世界でも、働き方改革という言葉は最近よく耳にするようになってきました。患者さんのために24時間365日頑張り続ける姿勢は大変立派なのですが、それはあくまで分業と役割分担をした上での話になっています。
 それに伴いリーダーに求められる資質も変わってきました。「俺について来い」と猛烈に働くばかりの上司は、残念ながら現代ではあまり歓迎されなくなっています。肝心な所で力を発揮するためには休んでおく時間も必要だという現実が、当たり前に認識されるようになってきたのだと思います。
 新型コロナ感染で辛い思いや大変な負担を感じるのは、第一に患者さんとそのご家族です。同時に医療従事者には、普段以上の働きや負担が求められる場面が増えています。辛さに耐えて頑張る時間があるからには緊張感から距離を置いてゆっくりする時も大切で、これは人間なら誰にでも当てはまることです。
 頑張り過ぎていると人の話に耳を傾ける余裕もなくなります。相手の話をきちんと聞くことのできる人が本当に強いのだとすれば、強くあるために休むという考えでいいのではないかと私は思います。休むということと弱さや怠け心を同一視するのは、少々言い過ぎになることもあるようです。
 ただ休むと言ってもコロナ感染の流行中に医療関係者が大宴会で盛り上がったりするのは、あまり適当でないようにも感じます。短時間でも仕事場を離れて身体を動かしたり趣味に没頭したりと、穏やかに休憩しながら力を養う工夫が必要とされています。
 お休みを取るのに卑屈になることも、休む権利を殊更に言い立てることも無用でしょう。ひたすら働いて頑張るお手本からバランス良く上手に休むお手本へと、医療現場でリーダーの役割も変わってきているのかもしれません。

もみじ10月号 四方山話より