2021年6月

 火事や水害で大変な時に「みなさん、速やかに避難して下さい。慌てないで。」と言われると「一体どっちなんだ。」と、つい考えるかもしれません。しかし非常時にはこういう一見矛盾するメッセージも必要である気がします。
 新型コロナウィルス変異株の広がりにより、岡山県も緊急事態となりました。5月になっても県内では接待を伴う飲食店でのクラスター発生が報じられるなど、緊迫感に欠ける残念な事例が見られました。その一方で、新型コロナワクチンの予約に関する5月10日前後の喧噪は大変なものでした。早くワクチンを打ちたいという思いから電話口や受付で気色ばむ方々の切羽詰まった様子は、対応した職員を通して私も詳細に伺いました。
 同じ一つの現象に対しても、それに対する感じ方は人により様々です。しかし災害の時には避難が不可欠、感染の爆発的増加には県民の団結した対応が必要、という方向性に揺るぎはない筈です。それが少しでも多くの人と共に生き延びる手段だからです。
 私にも飲食店を経営している友人、恩人がいるため大変に心苦しいのですが、それでもこの緊急事態に飲食店の協力は不可欠だと考えています。ここにも「経営が厳しいのに本当にすみません。でも今しばらく休業のご協力をどうかお願いします。」という矛盾したお願いがあります。
 何年か前にDJポリスという、大都会の群衆を軽妙な話術で誘導する警察官が話題となりました。一つ間違えば大事故が発生しそうな緊迫した状況下で、敢えて人を笑わせたりしながら事態の解決を促すという知恵がそこにはあったようです。
 時に厳しく、時に穏やかな一連の対応は、猛威を振るうウィルスで多数の命が失われる事態を避ける防護壁です。皆様どうか気持ちを一つに、今後も感染対策へのご協力をお願いいたします。

もみじ6月号 四方山話より