2021年5月

 何か恐ろしいもの、よくないものに出会ったとき、無力な自分はとっさに何ができるか。
 この度うちの末っ子が中学校に入学したのですが、もう何十年も以前自分が中学に上がる頃に、繰り返しこんなことを自問自答していたのを思い出しました。当時は校内暴力が問題になっていて、ガラの悪い中高生がおとなしい生徒を脅したりするのはよくあることでした。
 あの80年代のように分かりやすい不良や怖いおじさんを見かけることは最近減ったようですが、その分人間の中の悪や恐ろしさは形を変えて人を苦しめているようでもあります。残念なことに昨年の統計では、新型コロナウィルスの影響か自殺者の数が増えたのだそうです。しかも若い人たちの間で増えたとのことで、年頃の子供たちを持つ身としては考え込まざるを得ません。
 一種の暴力でも、コロナウィルスや仕事上のトラブルでも、「うわ、どうしよう・・・」と思わせるような事態に出くわすことはあるものです。気が弱くて機転もきかない私はこういう時人並以上に動揺するのですが、逃げ足の速さや救助者を見つける才能のお陰か、なんとかここまでやってきました。ただいつまでもそれが通用するかどうかはわかりません。新型コロナウィルスも油断できない状態が続いています。
 ああもうだめだ、もう無理だ、と早まった行動をとってしまう若い方々は実に気の毒です。変異型となってまた医療を逼迫させるコロナウィルスを前に、一体何ができるのか。怖い人達に脅された時はどうしたらいいのか。もちろん私にもよく分かりません。ただ自分の努力も大切ですが、人の力を借り、時には神や仏に祈ることも馬鹿にできない気がします。
 気弱な中学生の頃から自分は全く変わっていない気も致しますが、子供たちの成長にも励まされつつ、恐ろしいものの前で何とかもがき続けていこうと思っています。

もみじ5月号 四方山話より