2021年4月
 新型コロナウイルスは、一時は岡山県内でも感染者が急増し危機的な状況となりましたが、県をあげた努力のおかげで最悪の事態は一旦遠のいています。しかし会食や飲み会もできず旅行にも行けない生活はいつまで続くのか、いつまで我慢を強いられるのか、とまだまだ今の生活が辛いと感じている方もおられるようです。
 我慢が辛いというと、腎不全や糖尿病の診療では「食事制限が辛い」という患者さんの声がすぐに思い出されます。こういう時に、我慢や努力にも意外といい面がありますよ、と申し上げると怒られるでしょうか。
 勉強が辛い、スポーツの練習が辛い、仕事が辛い、などと「辛い」「嫌だ」「もう止めたい」という言葉は「好きだ」「楽しい」という声よりも耳に馴染んでいる気がします。努力が楽しいなんて嘘くさい、頑張っている自分に満足しているだけではないのか。私も随分長い間そう感じて、勉強や辛いことから何度も逃げ出していました。
 ところが、何だか面白くないなと感じていたことにいつの間にか引き込まれた経験も、そう言えばあったような気がします。逆に今まで楽しいと感じていたことに急に興味が持てなくなった、集中できなくなった、という経験もありました。辛いことと楽しいことは、裏表というか意外に近いものなのでしょうか。毎日果てしなく続くような維持透析や新型コロナ対策が、もう辛くて仕方ないだけなのか、それともやりがいや前向きな感覚が持てるのか。その差はほんの僅かなのかもしれません。
 人間社会に居座った新型コロナウィルスはなかなか向こうへ行ってはくれないようですが、へたばって降参する訳にもいきません。この厄介なウィルスとの長期戦では歯を食いしばるだけでなく、我慢の中から楽しみや面白さを見つけることも一つの方法ではないかと思います。
もみじ4月号 四方山話より