2021年3月

  年度末を迎え、子供さんや学生さんを始め「この一年はコロナの影響で、色々な行事が中止になったり縮小されたりして残念だった。」という声も多いと思います。感染症の広がりを抑えるためとはいえ、楽しみや貴重な機会を奪われるのはやはり寂しいものです。
 ただ、コロナウィルスによって余儀なくされた「新しい生活」についても悪いことばかりでなく良い所もあった、と思えることはないでしょうか。活動的に過ごすのが好きな方々には申し訳ないのですが、私のように家で過ごすのが好きな人間にとっては助かる面があることも事実です。
 岡山県全体で感染対策に努めた結果、風邪やインフルエンザで発熱する方の数は驚くほど減っています。毎年冬になると透析室や休日当番医で発熱への対応に追われるのですが、今冬は全く様子が違いました。恥ずかしながら私自身も、今まで手洗いやマスク着用など一般的な風邪・インフルエンザへの対策が不十分であったことが分かりました。毎年みんな困っていたインフルエンザが、実はここまでしっかり抑えられるとは本当にすごいことです。
 人と一緒に過ごすことが減ったとはいえ、一人でゆっくりと周囲の方々への感謝や労りの気持ちを噛みしめることはできます。それでは相手に伝わらないと言われるかもしれませんが、人との関わりは時間をかけて繰り返し思い起こすことで、より深まっていくことがあります。それが感謝や好意であるならば、決して無駄にはならず、いつかは伝わると思うのです。
 結果や変化を追い求める毎日から少し距離をおいて、自分が生きている意味や大切にしているものに目を向けることが、「新しい生活」が始まってから少し余分にできたような気がします。今年中にコロナ禍が収束するかどうかはわかりませんが、今だからこそできることも意外に沢山あるように感じています。

もみじ3月号 四方山話より