2021年11月

 今は10月の半ばで、コロナ禍が第5波を抜けて小康状態にあるところです。岸田新内閣ではワクチンと検査に関する証明書の活用やgotoキャンペーンの再開が取り沙汰され、経済活動の回復に向けてさあこれからという雰囲気があります。そこへ水を差すようで恐縮なのですが、以前のような暮しにみんなで戻るのが果たして正しいことなのか、私には少々疑問があります。
 10月になっても最高気温は連日30℃近くに達するなど、気候の異常な温暖化は肌で感じられます。海水温の上昇に伴い、記録的豪雨や水害の恐れが毎年のように我々の生活を脅かします。工場や発電所、自動車からの温室効果ガス排出削減には更に努力が必要であることが専門家から示されていますが、悩ましいことに経済活動の活発化は環境負荷の悪化と強く結びついています。
 経済成長のために国民の旺盛な消費行動が必要だと言う方々がおられますが、みんなで旅行や外食に出かけ、新しいものを色々買ったりすることが世の中をよくするという主張が、経済の素人である私にはどうも腑に落ちません。その代わりに真備町の水害や今回のコロナ禍を通じて、教えられたことはあるように思います。普段通りに三度の食事を頂き、電気や水道を当たり前のように使って自宅で寝起きできる有難みが、強く感じられるようになってきました。
 毎日節制や運動に努め透析にしっかり向き合いながら、私達はすでに長い年月を生きて来ました。どこかを観光してご馳走をいっぱい食べるような楽しみは制限されていますが、住み慣れた土地で穏やかに暮らすことは十分可能です。きれいな水と空気に恵まれた総社の地で透析に関わり続ける私達は、ある面で時代の先端にいるのかもしれません。コロナウィルスや腎不全のあるなしに関わらず、大量消費に頼りすぎる社会への疑問は、世の中の多くの方々と共有したいと思っています。

もみじ11月号 四方山話より