2021年10月

 コロナ禍で不安を感じながら暮らしている人が増えているためなのか、最近は特殊詐欺に関する注意喚起をよく眼にします。「あ、母さん、俺。」という電話で始まるオレオレ詐欺などに、ついコロッと騙されてお金を振り込んでしまう事例は多いようです。私も人から聞いたことをすぐ鵜呑みにしたりする傾向があるので、ゆくゆくは特殊詐欺の被害にあうかもしれません。
 日常生活では、即答をせずに「後ほど改めてお返事します。」という対応の仕方があります。それは別に何かを疑っているという訳ではありません。信頼できる情報源にあたって確認したり、後々のために記録を残し書類を保存したりするのも同様です。ちょっと面倒で時間がかかるようですが、丁寧な対応というのは自分にも相手にも最後には良い結果を出してくれます。
 「子供の勉強や人の仕事につい口を挟んでしまう。」という話を聞くと、私にもその気持ちはよく分かります。ただ自分が若かった頃を振り返れば、大人から余計な事を言われるのはやはり心外で面倒なものでした。「もっと自分を認めて、信じて欲しかった。」過去にそんな思いを抱えている方も多いのではないでしょうか。大丈夫かなあという一抹の不安があったとしても、人を信じる、人に任せるというのは悪くない選択です。慎重に時間をかけた末の判断は、例え失敗でも大きな被害を出すことは少ないようです。
 目の前のことに丁寧に対応できている時は、大事な所で思い切って人を信じられる気がします。反対に自分の判断を過信していると、あまりいいことになりません。少々おっちょこちょいな私が何とか医者の仕事を続けているのも、周囲の方々にいつも助けられているお陰です。「人を信じる」ことと「騙されない」ということは矛盾なく両立する。そんな感じに考えていたいと思います。

もみじ10月号 四方山話より