2020年9月

 一時は収まりかけたように見えた新型コロナウィルスの流行が、今また勢いを取り戻しています。お盆や夏休みを思うように過ごせず残念だった方も多いと思いますが、緊急事態宣言を再度出すか出さないか、政府関係者や都道府県知事の皆さんは随分悩んでおられるようです。
 県をまたいだ移動や、繁華街や観光地へのお出かけを厳しく制限すればコロナウィルスの広がりを防げることは実証されました。しかしそれは経済活動への悪影響が大きく、仕事を失う人の数を大きく増やしかねない、という事情は医師である私にもよく分かります。ただ持病のある患者さんや地域住民の健康を守るという立場からは、何とかしっかりした対策を政府や自治体にお願いしたいというのが本音です。
 医療に従事している立場でも、お金や権力のようなものから干渉を受けることは大なり小なり経験します。私も若い頃はそういう事情を少々迷惑に感じ、時々いらいらしたり腹を立てたりしていました。医療として正しいこと、当たり前のことに何故同意してもらえないのか。すみませんがもう少し医者の言うことを聞いて下さいませんか、という訳です。
 今は私もあまり若くはなく、お金や権力に反発して医療の理想を語ればよいという立場ではなくなってきた気がしています。それぞれの人にそれぞれの立場があり、自分に都合のいい正論だけ振り回してもあまりうまく行かない、ということも分かってきました。実際、コロナ禍が始まってから仕事が減って・・・という方は私の周囲にもおられます。経済のことを考えると厳しい行動制限には二の足を踏んでしまう、と言われると知らん顔もできません。
 しかし、やはり医療崩壊を防ぐための取り組みは止める訳にはいきません。人の密集を避けマスク使用などのマナーを守る、長距離の移動や観光はできるだけ控える。地道な取り組みが結局大事なのだと思います。どうか引き続きご協力の程、よろしくお願い致します。

もみじ9月号 四方山話より