2020年7月

 先日父の命日を迎えまして、今年は17回忌に当たります。諸般の事情から法事は端折ってしまったので父には少々申し訳ないのですが、ちょうどまた先日ある方が思い出話で「あなたのお父さんは、実に立派な人だった、、」と言って下さいました。父は祖父からは怒られてばかりだったと聞いておりますので、この話を父や祖父に報告すれば、きっと喜ぶことでしょう。
 コロナウィルス感染で亡くなった志村けんは、私の子供時代の憧れでした。シュバイツァーや野口英世の伝記などはろくに読んだ覚えがありませんが「8時だよ全員集合」は大好きで、毎週土曜の夜はテレビにかじりついていた記憶があります。いかりや長介に怒られながら大人や権威にたてつく志村けんの姿に日本中の子供が惹きつけられ、大人達は少々迷惑顔だった気がします。
 因島で開業していた祖父は亡くなる直前に、ウィリアム・オスラーという内科医の伝記を私に手渡してくれました。祖父の署名まで入ったその本を、恥ずかしながら私はあまりちゃんと読んでいませんでした。あまりにも真面目で立派なオスラー先生に、訳もなく反感を抱いたからです。それより私には、父が買い集めたエッチな本をこっそり拝借する方がよほど性に合っていました。それがこのクリニックで毎日仕事を続けるうちに、祖父の傾倒したオスラーやキリスト教の本を私も読むようになった訳で、これも遺伝なのでしょうか。
 志村けんは決してふざけていたわけではなく、笑いやコントにはひたむきで真剣な人だったそうです。父は苦しみも多かった自分の内面を、あまり世間の方々には見せていませんでした。偉大な人、立派な医師には色々なタイプがあるのだと思います。気合を入れたり力を抜いたり、私自身今までお世話になってきた多くの方々を思い浮かべつつ、今の仕事を続けていければと思います。

もみじ7月号 四方山話より