2020年12月

 師走の声を聞いて、「今年はコロナ一色でした。」と言ってしまうとそれまでなのですが、更にゆっくり振り返ってみるとしましょう。すると今年も色々な方々に、色々な場面で本当にお世話になった、助けてもらったということが思い出されます。世の中や周囲の状況はどうあれ、人の温かさに触れられるのは本当に有難いことです。
 しかし自分はどれだけこの一年、人の役に立つように、温かく振る舞うことができたのでしょうか。人にいらだちをぶつけたり、自分の価値観や持論を押し付けたり、相手の話を遮ったり、人が大切にしていることを軽くあしらったり、そんなことはなかったか。どうも思い当たることが数々あって申し訳ない気持ちになります。ただその一方で、こんな至らない、ダメな自分にも人は優しく親切にしてくれるものだな、と少々都合のいい考えも浮かんできます。
 世界からコロナウィルスが姿を消す気配はまだ見られませんが、せめて身の回りだけでも明るく過ごしたいと誰でも思われるでしょう。そこで来年こそ他の人にもっと何かを理解してもらおう、自分の要求を聞いてもらおうと考え始めると、かえって余計に苦しいような気がしてきました。優しく温かく接して下さる人達は、もともとこちらの価値観に共感した訳でも、働きや人柄を評価して下さった訳でもないのかもしれません。
 では何故そこに好意や思いやりが生まれるのか。正直分からない時がほとんどです。しかしともかく、人から受けた親切を思い出してその有難さをかみしめていると、また頑張ってみるかという思いが湧いてくるのが分かります。ひょっとすると自分の努力など何の成果も上げていないのかもしれませんが、それでも助けの手はどこからか差し伸べられます。諦めてはいけないのでしょう。また来年も、見当違いや空回りを恐れずに精進して行きたいと思います。

もみじ12月号 四方山話より