2020年11月

 秋冬を迎え、新型コロナウィルスとインフルエンザが一緒にやって来そう、という初めての事態が近づいています。私の周囲でも多くの方が不安を口にされるのですが、不安を完全に払拭するような力強い言葉をかけることもできず、申し訳なく思っております。
 不安やストレスで夜も眠れず、体調まで悪くなるという相談は時々受けますし、小心者の私自身も実は似たようなものです。気持ちが落ち込んで何も手につかなくなることが多い身としては、着実に仕事や身の回りのことをこなしている人がとても立派に見えることがあります。
 こういう時ふと思い出すのは、心配事や悩みがある時こそ手や体を動かしてみるという言葉です。料理や掃除に洗い物など普段通りの仕事をしていると、気持ちがそこに向いて落ち着いてくる。ただ悩んでいるよりも何でもいいからちょっとやってみよう、ということでしょうか。言い換えれば取り留めもなく悩み考えるよりも、今目の前にあることに意識や気持ちを集中しようとすることかと思います。
 物事を要領よく、短時間で手早く片付けることには私も子供の頃から馴染んでいました。過去の経験や知識のある事柄に対してはそれでいいのですが、答えのないような困難を前にした途端にそれだけでは太刀打ちできなくなります。まずは徹底的に悩んで困ってみる、それでダメならとにかく何かやってみて、後はとりあえずもう寝てしまうのも一つの方法です。翌日になれば、事態が少し改善することもあり得ます。
 そこまで居直った後で、また初めから悩み苦しみ、また何かやってみて、疲れて寝る。コロナ禍が収まるまでひたすらこれを繰り返すことで、不安やストレスとも折り合いがつかないかと思っています。新型コロナウィルスは厄介な問題ですが、印象や雰囲気に流されやすい私にじっと意識を集中させる大切さを教えてくれた気もします。

もみじ11月号 四方山話より