2019年8月

 数年前からうちの家内が、近所に畑を借りて野菜を育てています。私はたまに水やりを手伝う程度で、もっぱら獲れた野菜を食べる係です。全くの素人が手探りで始めた訳ですが毎年少しずつ収穫量も増えており、家内も色々工夫を重ねているのが分かります。しかしそこは我が家の畑ですから、よそに比べると何となく適当な感じも漂っています。
 うちの患者さんには田んぼや畑をされている方がいっぱいおられるので、私もお米や野菜に関する話は多少耳にします。興味深いのは色々と手間暇をかけると同時に、水や肥料をやりすぎてはいけない時があるということです。物事に一生懸命になると、ついあれこれと手をかけすぎたりするものですが、結果を出すためにはやりすぎも良くないというのはわかるような気もします。
 我々は子供の頃から、真面目に一生懸命やるのはいいことだと繰り返し教え込まれてきました。そのせいか、私は大人になった今でも「いかに自分が大変な思いをしながら頑張っているか」というようなことをつい口にしてしまう時があります。しかし他人の目というのは往々にしてクールなもので、自分があまり見てほしくないところに限ってしっかり見られていたりします。
 いい意味で手を抜くのがうまい人というのも周囲に一人や二人いるもので、そんな人たちがいつの間にやら一定の成果を挙げています。農作業も透析医療も長期戦です。一気に頑張って早く結果を出したいという思いもあるのですが、休み休み、穏やかに取り組む姿勢にも良いところがあります。思い通りの結果がすぐに出なくても、焦ることはないようです。
 周囲の親切な人たちにも色々教わりつつ、家内の畑はゆっくりと進化を続けています。自分で育てた野菜には愛着を感じるようで、私も彼女に見放されないよう畑に何か貢献しなくてはと考えております。

もみじ8月号 四方山話より