2019年7月

 私でも子供から勉強について尋ねられることがあるのですが、「とにかく基礎を繰り返すこと」と言って逃げています。まるで適当に言っているというのでもなく、見栄を張って実力以上のことに手を出し失敗していた自分の経験を思い出している訳です。
 世の中にはすごい人やかっこいい人、優秀な人が山ほどいるので、ついつい真似をしてみたくなります。ところがどんなにすごいな、かっこいいなと思っても、ただ真似をしてもどうもうまくいかないのです。しっくりこない、なんだか気持ち悪い。今までにそんなことが沢山ありました。その反省からか、もっと身近で当たり前のことを地道に繰り返すということを最近よく考えます。
 挨拶をする、お礼を言うなどというのは本当に当たり前のことで、何も難しく考えることはないはずです。それを私は無理をして何か気の利いたことも言おうとしたりするので、かえって物が言いにくくなります。前にも言ったお礼の言葉をまた繰り返したっていいはずなのですが、どうも余計なことを言ってしまいます。
 人と人とのつながりとはとても大きな力を生み出すことがあります。そして人と人をつなぐ言葉とは、難しい特別なものでなく、一見何気なくて、ありきたりなものであるようです。さりげない振る舞いの中に優しさや温かみを感じさせる人はうちのクリニックにもちゃんといて、毎日本当に助けられています。
 勉強でも医療でも人との付き合いでも若い頃には背伸びもいいのですが、結局は身の丈にあった基本に帰っていくような気がします。「お酒や甘いものをちょっと止めてみましょう」なんて当たり前すぎてがっかりするようですが、糖尿病や腎不全の自己管理でも、まず簡単で分かりやすいことから始めるのが無理なくうまくいくコツであるようです。

もみじ7月号 四方山話より