2019年4月
 月からは新年度で、若い人はそれぞれに新しいスタートを迎え、大人でも新しい生活が始まるという方はおられると思います。一年一年の成長を実感することもあれば、何も大して変わったようには思えないこともあったり、感慨というのは人それぞれなのでしょう。ずいぶん以前、私が子供や若者であった日を振り返ると、世の中に対して漠然とした恐れを感じていたのを思い出します。
 「自分の周囲の大人達は何と賢く、深い知恵を持っているのだろう。その大人からこの未熟な私を批判されては、全く恥じ入るしかない。」こんな不安を抱えながら、若い私は反省したり悩んだりしていました。それから時は経ち、色々な方々との出会いを重ねるうちに、もっと分かりやすい考えに引き付けられるようになりました。「してもらって嬉しいことを人にして、されたら嫌なことは人にはしない。」ある意味では当然なのですが、やはり大切なことのようです。
 当院を含めて、最近の事業所には「パワハラ・セクハラ相談窓口」を設置するようお達しが来ています。つまりそれだけ、こうした問題で悩んでいる人が多いということでしょう。誰かが一方的に人を支配するようなあり方は正しいのか。自分にとって嫌なことを他人に強要していいのか。子供にも分かるような当たり前のことが、実はパワハラ問題の根底にあるように思います。
 4月から昇進したり収入が増えたりした人も世間にはいる筈ですが、お金や権力を振り回すような大人ばかりでは、若者や立場の弱い人が困ったことになるでしょう。確かに大人には、あえて人に嫌われることを言わねばならない時があります。しかし周囲のためにできることをまず率先するのも大人の役割である気がします。若い人達と関わる中で「今まで散々やった」「もう今更やりたくない」と考えるより「私もやってみる」「ちょっと始めてみた」という柔軟さも、時にはいいのかもしれません。
もみじ4月号 四方山話より