2018年11月

 記録破りの猛暑だった今年の夏、ゴルフに出かけて暑さで死ぬかと思ったというお話を二、三の方から伺いました。しかし皆さん、もうゴルフなんか止めるとは決して言われない。「アホみたいでしょ」と笑いながらもゴルフへの愛が感じられる様子には、何だかこちらも楽しくなってきます。やはり趣味があるとはいいものです。
 手芸、マラソン、菊づくり、狩猟に登山などの趣味に、まるで修行のように打ち込んでおられるお話を、私は主に患者さんから聞いてきました。相当のお金と手間暇をかけて、どうしてそこまでのめり込むことができるのか。門外漢には理解しがたい部分もあるのですが、もしかすると人は何かに没頭する楽しみを知っているか、そうでないか、の二種類に分けられるのかもしれません。
 少しのお金と準備で手軽に楽しめる、というのは一見いかにも現代風で効率的です。しかしある程度の時間を辛抱して修練を積んだ後に、思いもよらなかった気持ち良さや奥の深さを感じたという経験も、そういえば誰でも一つや二つは過去にあるのではないでしょうか。
 仕事は辛く苦しく、趣味や遊びは楽しくてリラックスできる、と頭から決めつける考え方には少し疑問を感じます。仕事が面白くて充実している時期もあれば、趣味がしんどくて「もうグッタリ」という時もあるでしょう。いったいこれは趣味なのか仕事なのか、もう訳が分からないというほど何かに集中して取り組んでいる人からは、こちらも元気になるようなエネルギーが伝わってきます。
 仕事と趣味、喜びと苦しみは裏と表の背中合わせなのではないでしょうか。一見面倒くさくて、しんどそうなことの向こうに、実は、成熟した大人の奥深い楽しみがある。私にとって人生の先輩と言える患者さんたちから、とても大切なことを教わっているように思えてなりません。

もみじ11月号 四方山話より