2017年11月

一人静かに過ごすのが好きという人の割合は、世間でどれくらいなのでしょう。私がその中に入るのかどうかは微妙なのですが、空いた時間ができると本を読んだり一人で散歩に出たりする傾向があるのは確かです。いかにも地味で、充実した私生活をスマートフォンなどで人に伝えるような昨今の風潮には全く不向きな暮らしぶりですが、似たような方々も意外に多いのではないでしょうか。
 たまに人を捕まえて長話を始めてしまう悪い癖を持っている私は“一人静かに”という範疇には入れてもらえないでしょうが、自分の仲間や理解者を増やそうという積極性にも乏しいようです。先日は選挙がありましたが、政治という仕事に情熱を燃やす方とは本当にすごいものだと思います。多くの人に訴えかけ多数の支持をとりつけるということは、私などには途方もないことのように感じられます。
 こんな私でも、政治に興味を持たず投票にも行かない人が多いという話を聞くと、消極的な姿勢を少々反省することがあります。少し前にネット上で、透析に対する偏見に満ちた書き込みがなされて話題になったことを覚えている方もおられるでしょう。私は地味な仕事をするしか能のない、影響力や政治力などかけらも持ち合わせないような人間です。それでも、何だか変なことを言っている人たちに小さな抵抗を試みたり、いいことをやろうとしている方々をささやかに応援したりすることぐらいはできるのかもしれません。
 休日に投票に出かけるのも署名活動に協力するのも、人から「いいね!」などと殊更にほめられはしないような小さいことです。しかしそんな積み重ねが、医療や暮らしがまっすぐな道から大きく外れるのを防いでくれるのでしょう。スマホなしでも仲間が少ないように見えても、ささやかで確かな充実感を得る方法はけっこうあるものだなと思います。

もみじ11月号 四方山話より