2016年8月

 「みんな持ってるよ」とか「みんなそう言ってるよ」と子供に言われて、「みんなって誰と誰?」と尋ねたようなご経験はないでしょうか。
 イギリスが国民投票の結果EUから離脱することに決まったニュースが繰り返し報道されていましたが、この投票をめぐる騒動は確かに興味深いものです。移民が増え続けることに不安を感じてEU離脱に票を入れた人は、実際には移民が少ない地域に住んでいる傾向があったとか。EUから離脱したらどうなるか多少なりとも知っておく前に、周囲で優勢な意見に流されてしまった人も少なくなかったようです。
 空気を読むとか雰囲気を尊重するというような気の使い方はよくあると思いますが、周りの人がそう言うからという理由で何かを決めて後悔したという話も沢山あります。スピード感や効率が重視される世の中ではありますが、急いで結論を出す前によく考える時間を持つことも必要です。
 原爆投下や終戦の節目を迎える8月は、戦争を振り返り平和を祈る機会が多く持たれます。しかしあの戦争が起きた本当の原因は一体何なのか、未だにはっきり分かりません。みんなで勢いよく何かをやっておいて後で誰も責任を取ろうとしないような事態は、いつでもどこでも起こりうるのでしょうか。
 責任ある立場から「いい」または「ダメ」と明確かつ簡潔に表明するのは、実際にやってみると結構難しいものです。しかし「みんなって誰?」などと問い直しながら丁寧に事態を検討しようとする姿勢は、地に足の着いた安全や安心の大切な要素です。お祭りのようにみんなでワイワイやるのも楽しいものですが、自分の信じた道を静かに進む方に私はささやかな一票を入れたいと思います。

もみじ8月号 四方山話より