2015年7月

最近は5月に運動会を行う小中学校が増えており、私の周囲でも少し前にはその話題が多かったように思います。色々な人の話を聞いておりますと、最近の学校には子供達を徒らに競わせるだけでなく、一人一人のよさを引き出そうという配慮を感じることがあります。「頑張ったね」「よくやったよ」と褒めることが大切だともよく言われています。
 翻って大人の世界では、若者をこき使い搾取するブラック企業やハラスメントと言われる職場での嫌がらせなど気の滅入るような話題に事欠きません。高度成長期やバブル経済の頃とは違い、いくら頑張っても容易には経済的成果の上がらないこのご時世です。心が荒むというか気持ちに余裕のない人が増えるのも仕方ないことなのでしょう。「成果が出ていないなら、もっと厳しく要求してもっと頑張ってもらえばいい。こちらにはその権利と資格がある。」そう考える人が色々な所に大勢おられるような気がします。
 日本の医療界で訴訟の件数が増え始めたのはいつ頃からでしょう。私も医者になりたてのころから「訴えられないよう気をつけて」と繰り返し言われてきました。確かに「医師に対して更に厳しい要求を課すことが、医療の質や国民生活の向上につながるはずだ」という論調には時々お目にかかります。ただどうでしょう。現代医療が抱える問題は、誰かをぎゅうぎゅうと締め上げればそれで解決するようなものなのでしょうか。
 実は子供の世界でも、虐待やいじめの問題は根深いと指摘されています。ある所で厳しい要求や強いストレスを受けた人は、その反動や捌け口をどこかに求めます。人につらく当たったその結果は、回りまわって最後は自分に返って来るかもしれません。笑顔になる、人の良い所を褒める、感謝の気持ちを持つなどということには、結構本気で取り組む価値があるように思います。

もみじ7月号 四方山話より