2015年6月

 私は内科の開業医なので当然かもしれませんが、体重を減らしたい、血糖値を下げたいという相談を受けることがよくあります。それにはお酒と甘いものを止めるのが副作用もなく余計なお金もかからない良い方法だとは思うのですが、そう頭で考えた通りには行かないのが世の常です。ぴたっと止めればいいわけですからこんな簡単な話はないのですが、多くの方はもっと難しい別の方法を考える傾向があり私の提案にはあまり良い顔をされません。簡単なことがいちばん難しいというのは本当だなあというのが実感です。
 かくいう私も他の問題で困っていた時、ああでもないこうでもないとややこしく考えてばかりで本当に簡単なことを実行しておりませんでした。その一つにようやく手をつけて数ヶ月というところなのですが、何でこんなことが十何年もできなかったのかと言いたいところでもあり、また以前の状態に逆戻りしそうなところもあり、という現状です。「あれはダメです、これはやめましょう」と人様に偉そうに言っているくせに、まったくお恥ずかしい限りです。
 難しく考えずにまず最も簡単で明白なところから確実に手を付けるというのは、実は多少の勇気や思い切りが必要であるようです。特に日常生活の習慣を変えるということは、人の感情や欲求、不安やプライドなどから目をそらさずに向き合うことでもある気がします。この辺りに簡単なことがいちばん難しいという禅問答のような言葉の秘密があるのでしょうか。
 テレビで勧められていた食材や健康食品を試したり、ノンカロリーや糖質ゼロと銘打ったお菓子や飲み物に換えてみたりと我々の健康への希求は終わることがありません。シンプルライフという言葉もありますが、ダイエットや血糖値改善のお手伝いは「できるだけお金をかけず単純に、わかりやすく」と考えております。

もみじ6月号 四方山話より