2015年5月

 私事ですが、うちの末っ子がこの度一年生となり、赤いランドセルをしょって学校へ通うようになりました。小学生の宿題ではいわゆる音読が課せられることが多く、長男の頃から考えれば私も長いこと子供達の本読みを聞いてきました。加えて私が子供に絵本を読み聞かせることもたまにはあったのですが、声に出して読むというのは集中力を保つのに意外と役立つようです。
 そう気付いて昨年から自分が読むものでも音読を試みているのですが、これがなかなか面白いのです。恥ずかしながら、仕事である医学関連の本や資料は読んでもさっと頭に入ってこないことが珍しくありません。それが字をただ目で追うだけでなく、舌と顎と腹筋とを動かして声を出していると何だか少しは理解が進んだような気がしてきます。
 スマホやインターネットは画像や文字など視覚から入って来る情報が主であり、新聞やテレビも似たようなものかもしれません。もともと私はラジオや音楽を聴くのが好きで、目より耳を使った方が集中力や想像力が刺激されやすいようです。こういう人は実は結構多いのではないでしょうか。落語やラジオドラマ、文学作品の朗読も昨今ではかなり地味な印象ですが、やはり捨てがたい魅力があると思います。学校で繰り返し音読をさせる効用もこの辺りにあるのでしょうか。以前は新聞を声に出して読むお年寄りがいたと聞いていますが、うちの祖母にもちょっと勧めてみたい気がします。
 最近の私はネットで調べものをする際にも、画面の文字を声に出して読んでしまうときがあります。クリニックの片隅でパソコンにむかって何やらブツブツ言っている私を見て、「とうとうおかしくなったか。」と思われないよう気をつけたいと思います。

もみじ5月号 四方山話より