2015年10月

 最近のことですが、ある国会議員の先生が白髪染めを止めることにしたそうです。政界で若手のホープと呼ばれてきたその方は、44歳になったのを機に『おじさん宣言』という訳でしょうか。医者でもそうですが政治家も若いというのは良し悪しで、少しでも若く見せるために努力を重ねる方々とはちょっと違う事情があるようです。
 昨今は『オヤジ』などと呼ばれ何かといじめられることの多い中高年男性ですが、私が最近注目しているおじさんパワーの一つが自分を笑う能力です。腹が出て困るとか奥さんに頭が上がらないとか、まあネタは何でもいいのですが、こうした自虐的な話題でさらっと場を和ませる方々をお見かけします。これはある程度の自信と余裕がないとできないことで、意外と真似するのが難しいものです。
 人に笑われたくない、見下されたくない、という意地やプライドも時には必要なのでしょう。ただいつもどこか張りつめているような人には、「本当はあなた、お疲れなのではありませんか?」と声をかけてあげたくなります。肩肘張って人より優位に立とうとするのもいいのですが、敢えて自分を何だか弱そうで間の抜けたような立場に置いてみると、また違った角度から物事が解決に向かうことがあります。
 世間で若さや美しさがもてはやされる一方で、女性や若者のリーダーシップがまだまだ日本には不足しているとも言われます。それは医療の現場もまた然りかもしれません。その場を預かるということは、ちょっと見ると情けなくて格好悪いような場面も多いものです。自分の弱さやダメなところを穏やかに受け入れることもできる、おじさんみたいな女性や若者のリーダーがもっと多く現れることをみんなが待っている気もします。

もみじ10月号 四方山話より