2014年3月

 2月は冬季オリンピックのニュースが大いに盛り上がっていました。オリンピックを始めとするスポーツの世界は、順位や勝ち負けといった結果がはっきり出てしまうという意味ではとても過酷なものです。幼稚園や小学校の運動会で順位をつけることに否定的な考えが広がるのと反比例するように、オリンピックでのメダルに関する報道は過熱する一方であるように見えます。選手の皆さんも本当に大変だなあと、健闘を称えると共にお疲れ様と声をかけてあげたい気がします。
 先日銀行にお勤めの方と話をしていて「結果だけでなく過程を見て評価して欲しいと思う時があります」と聞き、勤務評定の厳しさを垣間見た思いがしました。分野は違えど同じ働く人間として、これだけ頑張ったのを認めてほしいという気持ちは何だか分かります。しかし自分に関しては努力や準備といった過程を評価してもらいたいけれど、他人に対しては分かりやすい結果を厳しく要求するというのは何だか矛盾を感じます。
 仕事でも競技でも結果の良し悪しは素人にも割と簡単に分かりますが、そこに至る過程を十分理解するにはその領域に関する深い知識や洞察が必要です。『目の肥えたお客』とか『見巧者』という言葉には、「昨日や今日から見てるんじゃないよ」という奥行きが感じられます。例えば野球や相撲もこんなお客の厳しくも暖かい視線に支えられて発展してきたのでしょう。
 透析医療の世界で金銀銅などと順位をつけられることはまずありませんが、十年二十年と長く透析を受けて来られた患者さんの視線は今日も静かに我々に向けられています。オリンピックの結果はどうあれ選手たちの鍛錬はまた始められているはずです。今日この日の仕事を通じて誰かのお役に立てたのか、はたまた何の力にもなれなかったのか。結果は様々かもしれませんが、とにかくまた明日につなげて前に進んで行こうと思います。

もみじ3月号 四方山話より