2014年2月

 先日、私の研修医時代の指導医にお会いする機会がありまして、当時色々なお話をして頂いたことを久々に思い出しました。そのひとつは「先生には母性を感じさせる女性が合う気がする」というお言葉でした。何故そういう話になったのかは忘れましたが、最近は子供の虐待や育児放棄といった話題も多く母性の力というものを改めて見直す必要はあるようです。
 母性は別にお母さんだけが持つものではありません。小さな女の子からおばあさんに至るまで、老若あわせた多くの女性たちが母性を発揮する場面を私もあちこちで沢山見てきましたし、またその恩恵にも与かり助けられてきました。しかし求められ過ぎると母性は枯れ果ててしまうし、私は母親なんだからという具合に振り回されても困ったことになります。母性を大切かつ慎重に扱い、程よく関わっていくのは男性を含めた周囲の役割なのでしょう。
 実際うちの家内が母性愛に富んでいるか否かはともかく、4人の子供たちがそれぞれに友達を連れてくるので我が家は時に子供だらけになっています。クリニックにおいても妊娠や出産の話がまだまだ続いており、私を含め多くの者が直接間接を問わず子育てにかかわっています。母性の力が自分自身の子供を超えて、多くの対象に向かって活力をゆっくりと拡げているのが毎日のように感じられます。これが仕事の面でも大きなプラスになっているのは申し上げるまでもありません。
 金を稼ぐ経済力や政治的な権力、威嚇や恫喝といった暴力などとは違い母性の力とはもっと柔らかくて暖かいものです。我々が生きる医療の世界には、それは多少にかかわらずいつも必要である気がします。先生から看護師、事務員までみんな男ばっかりという病院は、ちょっと想像できません。私が政治力に乏しく喧嘩にもまるで弱い男だということを、指導医の先生は的確に見抜いていたのでしょう。職場でも家庭でも様々な形の母性に支えられ日々を戦えていることに、改めて感謝したいと思います。

もみじ2月号 四方山話より