2014年11月

 先月のことですが、今年のノーベル賞は3名の日本人が受賞したこともあり特に大きく報じられていました。青色ダイオードやLEDは確かに素晴らしい発明ですが、平和賞を受けたパキスタンの若い女性も印象的です。「全ての女の子にペンと本を」と訴え続け武装勢力に銃撃されたという経緯は、強いメッセージを世界中に届けたと思います。
 子供の頃や学生時代には、「少々勉強ができても役に立たん」とか「勉強ばかりではダメ」という言葉をよく聞かされました。恥ずかしながら若い頃の私も、そんな空気に影響されるところがありました。しかし勉強することが批判される背景には様々な事情があります。パキスタンの地で暴力による支配を繰り広げる男達にとっては、「みんなで勉強しましょう。私達にはその権利があります。」と訴える若い女性は不都合で邪魔な存在であったようです。本当に強い武器とは力ずくで人を従わせることではなく、ペンと本を手にとって学び続けることだという彼女の主張を、実は武装勢力自身が認め、危険視しているのでしょう。
 「ガリ勉」などといった否定的な言葉が勉強家に向けられるのを聞いたことがありますが、勉強しすぎて一生を棒に振った人を私は見たことがありません。一方で「いやー、全然勉強してないよ」と言いながら陰で相当に努力している人には沢山出会ってきました。更に「もっと勉強しておけばよかった」と後悔している大人に至ってはもう数えきれません。
 日本に武装勢力はいませんが、いじめや嫌がらせ、虐待といった具合に暴力は陰湿に形を変え我々の身近なところでもはびこっています。また医療の仕事に関わる者に、ずっと勉強が求められるのは当然です。あまり何度も言うと周囲に嫌われそうですが、ペンや本とともに勉強を続けることが、様々な圧力や理不尽さに立ち向かう一つの大きな答えなのだと改めて教えられた気がします。

もみじ11月号 四方山話より