2012年8月

 先日のことですが、大津市の中学校でいじめに遭っていた少年をめぐる問題が大きく報道されました。子供のいじめが最悪の結果を迎える事件は以前からあり、何とかならないものかといつも考えさせられます。無抵抗な相手を大勢で寄ってたかって攻撃していた様子を想像すると、何とも言えず重苦しく暗い気分になってきます。
 いじめとは人間の集団にはありがちな一種の病気のようなもので、決して子供だけの話ではありません。むしろ原因の根本は大人の社会にあると言われています。医療関係者でも職場でのいじめに耐えきれず退職しました、というのは時々ある話です。「関わりたくない」「巻き込まれたくない」という思いが、いじめの病巣をますます悪化させていきます。ついうっかり自分がいじめる側に加担してしまう危険もあり、この問題は本当に厄介です。
 気が小さいくせにマイペースなためか、私は子供の頃よくいじめられて泣いていました。大きくなってからの出来事にも思い当たる節がないこともありません。旅行に出かけた外国で、「この日本人め」とばかりに汚い言葉を浴びせられ石を投げられたこともありました。今でもあちこちで色々なことにぶつかって、よたよたしながらどうにか毎日を送っているだけのようなものです。ただ有難いことに、困った時には必ずと言っていいほど助けの手が差し伸べられてきたことに思い当たります。本当に感謝しなくてはいけません。
 海外の先進国でも深刻化しているといういじめの問題を前に、我々一人一人はまるで無力に近いのでしょうか。そこにいじめがあるという現実を受け入れる意志や、人と人とのつながりを信じる心が状況を改善してはくれないでしょうか。誰にでも弱いところは必ずありますが、仲間を見つけて手を携え共に戦う能力もまた全ての人に備わっていると思います。まだまだ全国に沢山隠れているはずのいじめられっ子達に、「負けるなよ」という気持ちを伝えたいものです。

もみじ8月号 四方山話より