2012年5月

新年度が始まり早くも一カ月経ちました。この春から始まった新しい環境にどうもなじめない、気が重くて憂鬱だ、何だか体もだるくて食欲も今ひとつというような方が皆さんの周囲にも一人くらいおられないでしょうか。どこの医療機関でも春には新しい職員の方を迎えることが多いようですが、人手不足が慢性化しているといわれるこの業界ですから是非とも新しい力の定着を願いたいものです。
 新しいスタートを切るときに、「頑張ります」と語ってくれる人は何とも頼もしくすがすがしいと感じます。しかし努力しているのになかなか結果が出ず、周囲からも認めてもらえず苦労したというのはよくある話です。最近の職場では自分の実力以上に権利や要求を振り回す人が増えたなどとも言われますが、実際には生真面目に反省したり考え込んだりする人の方が多い印象もあります。
 上司や先輩、顧客や利用者の方々から厳しく鍛えられることで社会人として成長するのだという考え方は古くからあります。研修医時代の私にとって恩師とも言える先生は、鉄拳制裁も辞さないこわーい人でした。また幾多の修羅場を実際に経験することで初めて身に着くこともあるでしょう。一方で部下や新人の指導に悩み、ぼやいている場面にもしばしば遭遇します。医療に限らず職業指導のノウハウを掲げた本は山ほどあるようですが、人が成長していく過程に唯一絶対の正解はありません。
 人のやり方や価値観を押し付けられるのには耐えられない、との言い分を耳にします。また人と人との接し方や、仕事に対する考え方は時代と共に変化していきます。「こんなに頑張っているんだし、私は間違ってなんかいない!」こんな風に思いつめると、事態は余計に悪化しそうです。人の問題は時が解決してくれることも多いと聞きます。私の周りでも色々ありますが、頑張り過ぎず、でも諦めず投げ出さず、気長に取り組んでいこうと思っています。

もみじ5月号 四方山話より