2011年7月

 六月には母の日に比べてどうも地味な父の日があり、父親というものについて少し考える機会がありました。地震・雷・火事・親父などと怖いものの代表のように言われていたのはすっかり昔の話になっていて、父親の役割というのがなんだかよく分からない世の中になってすでに久しい気がします。世間ではイクメンなどといって哺乳瓶やおむつを持ち歩きしっかり育児参加する若いお父さんが注目されているようですが、子供の運動会や学芸会にさえ行ったことのない私などは今時の父親としては失格でしょうか。
 男は敷居をまたげば七人の敵がいるという言葉がありますが、現代のお父さんが「俺は毎日外で戦ってきているんだ」と家で威張ろうとしたらどうなるでしょう。「冗談じゃないわ、私だっていろいろ大変なのよ!!」と言わぬばかりのきつーい逆襲を喰らいかねません。確かに今は女の人も仕事を持ってどんどん外へ出ていく世の中ですし、敵と戦うのは既に男の専売特許ではないのでしょう。古いドラマのように大声をあげてちゃぶ台をひっくり返したりするわけにもいかず、カミナリ親父の居場所などもうありません。
 子供の頃から気が弱いうえにまるで腕力のない私は、近所の子にもよくいじめられていました。ぴいぴい泣いて家に帰りますと、母から「なさけない、やられたらやり返して来なさい!!」と怒られては余計にまた泣いていたものでした。今ではこの勇ましい教えは家内が息子たちに伝えていますが、はたしてどうなることでしょう。しかしここでも戦う姿勢を体現しているのは女性たちのようです。
 長く当院に通っておられる患者さんからは、「昔は体重やカリウムを増やしてきたらもっときつく叱られた。今はちょっと優しすぎでは・・・」という声も聞かれます。私が厳格で怖い父親や医者になるのはだいぶん先のようですが、とりあえずは「まず自分に厳しく」という目標で許してもらえないでしょうか。

もみじ7月号 四方山話より