2010年8月

毎日の診療で非常によくお聞きする訴えの一つに、眠れなくて困るというものがあります。大半の方はレンドルミンやマイスリーといった薬で何とか休めるようになりますが中には色々薬を取り替えてみてもなかなか思うような効果が出ず、患者さん共々途方に暮れてしまうことがあります。都会に比べれば地方は夜が早いとも言いますが岡山でも24時間営業の店舗はじわじわ増え、職種を問わず深夜に働く人は少なからずおられます。眠りや覚醒の仕組みにはまだよく分からない部分もあり、疲れて横になりさえすれば眠れるというわけでもありません。医療機関に相談することもなく、よく眠れない毎日に困っている人も結構多いのかも知れません。
 しばらく前にはサッカーワールドカップがあり、多くの人が深夜のテレビ観戦で寝不足になっていたようです。私も時々テレビでサッカーを見るのですが、さすがに翌日の仕事に差し支えるので日本代表の応援は気持ちだけにしておきました。しかし深夜であってもテレビやDVDを見たり、パソコンでインターネットに接続したりということは簡単にできる世の中です。普通なら寝ている時間に様々な情報や刺激が脳に届くというのも、睡眠と覚醒のリズムを乱す一因なのでしょうか。
 これから夏本番、それから残暑の厳しい季節になります。蒸し暑くて寝苦しい熱帯夜に悩むことも増えるでしょう。クーラーをかけすぎれば体調を崩すし、窓を開けるのは物騒だったり蚊がうるさかったりと暑さ対策もなかなか難しいものです。家の間取りや寝る時間も人それぞれ違うでしょうから、何とか自分にあった過ごし方を見つけるしかありません。
 生意気なようですが、私も深夜になって目が覚めてどうにも眠れないことはあります。こういう時私の場合は本を引っ張り出して書き写してみたり、ひたすら横になったまま朝を待ったりしている方が翌日への影響が少ないようです。夏バテを防ぐためにも十分な休養は大切です。たとえあまり眠くなくとも様々な刺激を遠ざけて、静かに横になっている時間というのは体調の如何に関わらず意識的に確保したいものです。

もみじ8月号 四方山話より