2010年5月
 うちの家内が長男を連れて近所を歩いていたところ、見知らぬ女性から「ひょっとして杉本くんの…」と声をかけられたことがあるそうです。長男が私にあんまり似ているので、私の同級生のお母さんがつい話しかけてきたというわけでした。また先日私が歯医者に行った時にも、待合いで同級生にばったり出会いました。今ではお互いの子供がこれまた同じ学校に通っているのですが、自分が育った地元で暮らしていると往々にしてこういう事があります。
 新聞社のアンケートによると、地元に愛着を持っている人の割合は地域によって随分開きがあるそうです。沖縄や関西、福岡といったところでは地元が好きという人が多いようですが、我らが岡山は残念ながらひどい結果でした。そもそも自分の国が好きだという日本の若者も多くはないそうですし、合わせて考えると我々岡山人は郷土への愛着がかなり薄いということになるのでしょうか。
 私ももっと若い頃は岡山の良さなど余り考えたことはなく、都会へ出たいと考えたりわざわざ遠く離れた所の大学を受験したりしていました。ここではない何処かにもっといい暮らしがあるのではないか、と若い人が考えるのはよくあることだといいます。しかしそれなりに年をとって子供ができたり体を壊したりすると、親兄弟や昔馴染みがいる環境の有難みも分かってきます。倉敷、総社という地元への私の考え方やとらえ方も今では大分変わってきました。
 岡山県、ことに総社市は気候が穏やかで災害も少ない土地柄と言われます。またきれいな空気や水にも比較的恵まれており、大学病院や基幹病院へも日帰り可能な近さです。これは透析医療を続ける上では実に有難いことだと常々感じています。都会のような刺激や便利さでという点では見劣りするかもしれませんが、子供を育てたり老後を過ごしたりするにもなかなかいいところです。岡山を愛していて大手饅頭や高橋大輔選手が大好きという人ばかりではないでしょうが、自分が暮らすところの良い点を探して確認してみるのも大切であるような気がします。
もみじ5月号 四方山話より