2010年11月

この11月で杉本クリニックは創立23年を迎えます。節目というには中途半端な年ですが、また一つ無事に年輪を重ねられたことに感謝したいと思います。私が院長になってからは6年と少々ですが、6年間で何かが大きく変わったのかと問われますとちょっと返答に困ります。細かいことは色々と変わっているのですが、基本的には同じような診療活動を続けております。さてこれはいいことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか。
 週三回の透析をずっと受け続ける生活や、年末年始も祝祭日もない透析施設での仕事はどちらも拘束が多くて精神的にきつい時があります。透析や糖尿病など慢性疾患の医療は、急性の病気や救急医療のような目覚ましい変化があるわけではありません。そして医療を扱ったテレビ番組や雑誌の特集でみられる、心を震わせる感動や人生を変える出会いは我々のような施設では正直稀だと言っていいでしょう。
 『継続は力なり』とか『一所懸命』などと言葉にしてしまうと、言い古されて少々陳腐な感じもします。しかしやはり我々の今までやってきたこと、そして今日もまたやっていることはこういう地味な言葉にこそ集約されていると思います。特別に神聖視されたり大きな賞賛を受けたりするわけではありませんが、地道に自分自身や人の生活を支え続ける毎日です。医療を提供する側も受ける側も、一人の例外もなくその人なりに努力を重ねており、一人の例外もなく一定の敬意が払われて然るべきです。
 もとより我々の力は無限ではなく、できうる努力にも限界はあるでしょう。自分の理想を人に押しつけようとしても、すぐに結果が出るわけではありません。傍目には同じようなことを続けているだけに見えても、こつこつとした日々の変化や改良を穏やかに積み重ねるのが我々の仕事だと考えています。患者さんも職員も毎日確実に前進しています。我々は控えめながらも確信を持ってこの歩みを続けていくでしょうし、それは疑いなく『いいこと』なのだと思います。

もみじ11月号 四方山話より