2010年10月
 今年の猛暑はまた格別でしたので、うんざりするような残暑の後で待ちに待った秋がやっと来てくれたという感じを持たれた方も多かったのではないでしょうか。熱中症対策などが唱えられたりしましたが、基本的には涼しくなるのを待つしかないというところもありました。考えてみれば、新型インフルエンザが流行っても猛暑に苦しめられても、基本的には事態が収まるのを待つというのが主たる方針の一つだったような気がします。
 何かを注文して取り寄せるにしても新車を買うにしても、納品まで待つ期間は短い方が喜ばれます。とかく待つよりは待たない、待たせない方がいいでしょう。しかしどうしても、何でもすぐにすぐできることばかりでもありません。所定の時間に遅れて相手をお待たせしたような覚えは誰でもあるでしょうし、まだかまだかと急かされてもストレスばかりがたまる一方だという思いをお持ちの方もあるでしょう。待つ側と待たせる側と、人は時と場合によって両方の立場を行ったり来たりします。相手を待たせるのは仕方ないが、こちらが待つのは我慢がならんという訳にもいかない気がします。
 様々な問題に直面して困った時、たとえすぐに名案が浮かばなくとも一晩おいて翌日になってみるとどうにかなったということをよく経験します。問題の背景をよく確認したり、人の意見を聞いてみたりするうちに解決策が見つかることもありますし、しばらく待っていると自然に何とかなったりすることもあります。政治の報道では“待ったなし”とか“国民はもう待てない”などという表現が多用されますが、日常の生活や仕事では半日か一日ぐらいは待てることが少なくありません。慌てて変な結論に落ち着くより、すこし余裕をもってより多くの人に受け容れられる答えを探る方が穏やかに過ごせるように思います。
 情報通信や交通機関がこれだけ高速化した現代ですから、人間の頭や気持ちは少し道草をしていてもバランスがとれていいのかもしれません。私も人に指示を出したりものを頼んだりすることは多いのですが、“早く、早く”と急かすことにならぬよう配慮したいと思います。
もみじ10月号 四方山話より