2009年6月

先日サッカーでも見ようかと思ってテレビをつけたところ、廃墟に呆然とたたずむ子供たちの画像が眼に飛び込んできました。見れば先般のイスラエル侵攻を受けたガザ地区の特集番組で、映っていたのは銃撃やロケット弾によって家や両親を失った子供たちでした。私の傍にいたうちの子も、よく分からないなりに画面に釘付けになっていました。
 その番組を全部見た訳ではないのですが、戦争で大切な家族を亡くしたのはイスラエルの人も同様である筈です。同じように生き、同じように大切な家族を持つ人々が何故か敵味方に分かれて傷つけ合い憎み合う悲劇が延々と繰り返されています。やられたらやり返す、そこには幸いにも平和に暮らしている我々には口を挟むことのできない厳しい現実があるのでしょう。やられたらやり返す、目には目を歯には歯を、という表現には生きるために戦い抜く固い決意が溢れています。確かに甘くはないこの世の中で、そのくらいの根性がなくてはやっていけないのかもしれません。
 その一方で、情けは人のためならずという言葉があります。自分が人に対して行ったことはいずれ自分にもはね返ってくるという考えは、古来私たちにも馴染みがあるものです。今は権力を握っていたり喧嘩に強かったりして我がもの顔で威張っている人も、いずれは一方的な命令に服従する側に回っているかもしれません。攻撃する側とされる側、暖かい支援をする側とされる側、悪いことでも好いことでも人の立場というのは時と共に転変します。

 平和だと思っていても、隣の国から変なものが飛んできたりする時代です。いわれのない暴力や脅しには屈しない、という覚悟が問われる日がいつ来るか分かりません。自分の身や家族の安全を守るためには、時に必死の戦いが必要なんだと認識している人は多いと思います。しかし他の人にもまた家族があり守るべきものがあります。自分たちのために相手をやっつける、周囲の人を押しのけるという行動をみんなが取り始めたらそこにはまた目を覆いたくなるような光景が広がるだけです。戦いか平和か、これはテレビの向こう側だけの問題ではなく日々私たちに自問自答を迫っています。

もみじ6月号 四方山話より