2008年2月
 1月から2月ともなりますと、当院でも子供さんやお孫さんの受験ということが話題になることが増えて参ります。私が中学・高校へ通っていた頃は受験競争が過熱しすぎることに疑問を呈する声がよく聞かれていました。勉強ばかりしていると社会性や人間性を育てる機会を失うとか、難関校と言われる学校へ通っている学生には変わった人が多い、などとまことしやかに言われていたのを覚えています。周囲のそんな声を聞いて育った私も何となくそういうものかなと思っておりましたが、成人して多くの優秀な先生方と知り合うに従い全く間違いであったことを知りました。学業や仕事ができて人格的にも円満な人というのは大勢いるものなんですね。
 勉強しているとクラブ活動ができないとか、仕事に時間を取られて私生活が犠牲になるという言い方をよく聞きますが、端からそう決めつけることもないような気がします。実際にはバリバリ仕事ができて遊ぶときは思い切りよく遊ぶという人はいますし、子供を育てながら立派な業績を上げた人もいます。何かが邪魔するから他の何かができないと決めてかかる前に、自分のしたいことを追求する強い思いがあれば多少の回り道はあっても何とかなってしまうことも多いようです。
 遊びや恋愛などやりたいことがたくさんある時期に、教室や図書館に籠もって地道に勉強などというのは確かに暗くて辛気くさい印象があるかもしれません。もっと真面目な若者は親のすねをかじって勉強していることに罪悪感を持つこともあります。「他にやりたいことやするべきことがあるのに私は今こんなところで何をしているんだろう」「こんなことで私の貴重な時間がすりへって行くのは耐えられない。」自分が受験生の頃こんな言葉が周囲に飛び交っていたのを思い出します。けれども少しも焦ることも否定的な思いを持つ必要もなく、そのときの自分に課せられたことに懸命にとり組むことは決して無駄にならないような気がします。
 受験シーズンには風邪やインフルエンザに神経質になるご家庭が増えるようです。周囲で見守るご家族もそのまた周囲にいる私たちも、うがいや手洗いの励行で風邪を予防してささやかながら受験生を応援したいものです。
もみじ2月号 四方山話より