2008年12月

 アメリカで初の黒人大統領誕生が決まったとのことで、しばらくニュースはその話題が続きました。卓抜した演説もさることながら人種を越えた融和と対話の重視を掲げる彼オバマ氏の理想は、今までの政治に嫌気がさした多くの人々をとらえたようです。彼に関する雑誌記事を読んでも積極的に批判しているものはほとんどないようで、アメリカ国内のみならず世界中の人々がこの新しいリーダーに熱い期待を寄せています。
 日本では、颯爽と登場した若き指導者があっという間に失速してしまった例を何年か前に経験したように思います。毎月じわじわ下がっていく内閣支持率のグラフは、理想と現実の違いや国民の期待に応えることの難しさを示しているようでした。美しく掲げられた理想や理念の下でみんなが一丸となって輝かしい未来に進んでいく、そんなことは夢か幻でしかないのでしょうか。
 様々なことがあった今年も残り少なくなってきました。来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、新しい年は今年よりもいい一年になって欲しいと願いたくなります。そして人々に良い年月をもたらしてくれそうな指導者に期待が集まるのは無理からぬことだと思います。しかし景気や経済は言うに及ばず、環境にしても治安や戦争の問題にしても世界には難題が山ほどあるようです。神様ではない大統領や総理大臣に素早い解決を求めても、後でがっかりすることになりませんようにと祈るほかありません。
 私事ですが先日我が家に四人目の子供が生まれました。スーパースターの新大統領と違う凡人の父親は、この子にどんな夢や理想を語ってあげられるのかと考え込むほかありません。しかし生まれたばかりのくせに喧しく泣き母親の胸にぐいぐい吸い付く元気な姿は、「何とかなるさ」という希望や「負けるものか」という闘争心などを感じさせます。偉大な指導者の描く未来像もいいですが、地道に生きる日々の営みもまた私たちの将来を切り開く重要な鍵だと思います。
 来年もまた頑張ります。(…五人目を作るという意味ではございません、念のため)

もみじ12月号 四方山話より