2008年11月

 最近は気持ちのよい秋晴れの日が多く、総社市内では稲刈りを終えた田んぼの光景が広がります。総社の中でも国分寺の周辺や高梁川河畔には広々とした空間があり、この土地が太古から人の住む所として恵まれてきたことを感じさせてくれます。日常生活ではなかなか車や足を止めてゆっくりこうした風景をみるという訳にはいかないのですが、それでも自分がこの地で仕事をさせて頂き、日々の暮らしを送らせて頂いている有難みを感じることは十分にできます。秋は総社市内で地区ごとの神社を中心にしたお祭りが多く行われますが、我々が暮らすこの天地に感謝を捧げる時期なのだと思います。
 また111日は当院の開院記念日です。私が院長を務めるこの施設で私自身が杉本クリニックに感謝すると言うと、なんだか変かもしれません。しかし院長とはいえ私がこのクリニックを自分の所有物とか私物のように考えていいということではないと思います。前院長や多くの患者さんを始め開院以来ここで懸命に生きてこられた無数の方々やこの土地、建物、機械や道具の類に至るまで全てを合わせた大きな存在が杉本クリニックなのであり、その存在に私が感謝と敬意を払うべきではないのかと考えるときがあります。翻って自分がどれだけ一個人としての欲や感情を抑え、クリニックの代表として日々を闘えているのかと振り返ってみると「まだまだだなあ」と言わざるを得ません。お恥ずかしい限りです。
 広い天地に思いを馳せてみますと、けちくさい欲や不安にとらわれて日々を送っている自分の小ささに思い至ります。私自身は神社に熱心に参詣しているわけでもお祭りの世話役をしているわけでもないのですが、市内のお祭りと開院記念日がたまたま近い時期に重なっていることには何だかご縁のようなものを感じます。医療機関として無論我々も日々の努力を重ねておりますが、それ以上に我々を大きく包み込んでいる天地のような存在を忘れてはならないのでしょう。賑やかな行事やお祭りは予定しておりませんが開院記念の日を迎える一年一年の積み重ねがあることに、おごりや慢心にとらわれず感謝やおそれの心を持ち続けていたいと思います。

もみじ11月号 四方山話より