2007年7月
 毎回この原稿を書くのに使っているパソコンが古くなってきたので買い換えを思い立ちました。特別な使い方をしているわけではないのでごく普通のものでいいのですが、雑誌やインターネットを調べてみるとまあ世間には何と多種多様のパソコンが用意されていることでしょう。国内メーカー製はアフターケアが丁寧ですよ、こっちは外国製で余分な機能がついていなくてデザインが優れています、さらにこちらは丈夫で仕事向きでしかもお手頃低価格ですなどの様々な宣伝に、コンピューターにあまり詳しくない私はもうどれにするか選ぶ前に目が回りそうです。
 選択肢が豊富に用意されていてその一つ一つに詳細な情報が提供されているというのは、賢い選択をするためには喜ばしいことだと思います。パソコンや家電に限らず、自動車や生命保険、金融商品にいたるまで今の世には数十年前では考えられなかった程の選択肢が溢れています。様々な広告には「自分らしさ」や「今がチャンス」などといった言葉が躍り、自分に合ってしかもお得な選択をすることが豊かで有意義な生活に不可欠であるような気がしてきます。選択の対象が商品ではなく、就職先や結婚相手といった問題になってくるとさらに事態は深刻なのかもしれません。
 岐路の選択に迷うあまり、選んだその後の大切さをつい忘れてしまいそうになります。よい職場やよい伴侶を選ぶことも大事なのでしょうが、実際にそこでどう働き、どんな家庭を作るかということには自分自身の努力が大きく関わってきます。パソコンは仕事の道具ですがどんなにいい道具を手に入れても、しっかり仕事をするのでなければ宝の持ち腐れになるでしょう。あちらを立てればこちらが立たずということもあります。自分は何を求めていて、何がしたいのか、ということがはっきりしていなければ賢い選択というものも有り得ないようです。逆にそれさえ分かっていれば、実際の細かい選択は信頼のおける人にお願いするのも一つの手です。
 さんざん迷った揚句ですが、結局この度のパソコン選びは他の人に委ねることにしました。私は新しい道具で少しでもいい原稿が書けるようにまた頑張ります。
もみじ7月号 四方山話より