2007年4月
 いつもこのもみじに患者さんの心温まる文章や、当院の職員がいろいろ資料を調べて考えた記事をお載せしておりますが、その後ろの方に院長の私が毎度毎度とぼけたお話を書いておりまして恐縮致しております。「『四方山話』などとのんびりしてないで、もっと働いてくれなきゃ困るよ」そんなお声も聞こえてきそうですが、日頃私が考えたり感じたりしていることを少しでもお伝えしたいという思いから毎月の原稿を書いております。
 開業医として外来をしておりますと、「先生にお話できて少し楽になりました」と言われることがあります。全部楽にして差し上げることは出来ないかも知れませんが、少しでも楽になったと言って頂いた時は自分が仕事をしている意味を感じる瞬間です。人が生きて、暮らしていく中では色々なことを考え、感じるものだと思います。例えばそれは医療を受ける立場にある人も、医療を行う立場にある人も同じでしょう。色々な思いの中には正直なところ、あまり大きな声では言えないことが含まれる場合もあります。そうした様々な思いを少しでも交わし合うにはやはり言葉が必要で、相手を傷つけないように自分の意思を伝えるのはなかなか難しいものだと日々感じております。私が様々な方からのお話を伺うときでも、何の解決策も浮かばずこちらも途方にくれてしまうことがしばしばです。そんな私に愛想をつかしてしまわれるのか、捨てぜりふを残したまま話を終わられたり電話を切られたりすることもあります。せっかく話をしても何にも返ってこないのでは仕方がない、と思われているかも知れません。
 答えも解決法も出ないような話をすることに意味はない、と結論してしまうのは寂しすぎるように思います。ちょっとした雑談や世間話をしている中からでも、ふっと答えの糸口が見付かることがあります。 『四方山話』を皆様にお届けし続ける中から何かが生まれてくるのではないか、そう願ってやみません。
もみじ4月号 四方山話より